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宇高が、上記の本願商標の登録の依頼を受けたならば、
先行商標の調査を行い、登録5984053号商標「珠屋珈琲」の存在を知ったならば、
上記商標を、そのままの形態で、出願をする事は有り得ません。
どうしても出願して欲しいとの事であれば、出願しますが、知的財産高等裁判所まで持ち込んで争う事件ではないです。はっきり言って無駄遣いです。
出願するにしても、宇高ならば、上記商標の図形部分(○の中に「珠」と「TAMAYA」とが記された図形部分)だけにするとか、
「珠」の一部と「屋」の一部とを重ね合わせるとか、
漢字「珠」を別の漢字、例えば「玉」にする(出願人が株式会社珠屋ですから、是は有り得ない?)
と言った工夫を提案します。
そうしないと、商標登録は不可能です。
尤も、宇高は、指定商品がタオルにおいて、「XXXXタオル」と「XXXX」とは誤認混同が起き得ないとして、「XXXXタオル」を登録に持ち込みました。しかし、これは「百千万劫難遭遇」です。
宇高は、「プレミアム5」と「プレミアム」とは誤認混同が起き得ないとして、「プレミアム5」を登録に持ち込みました。しかし、これは、「プレミアム」は識別力が弱い(識別力が無い)と言う特殊性から、登録が認められたと考えております。
下記の判例『「珠屋」の文字部分は、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとまではいえないとしても、一定以上の自他役務識別力を有する部分といえる。』にも合致しております。
令和7年(行ケ)第10010号 審決取消請求事件
主 文
1 原告の請求を棄却する。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が不服2024-13830号事件について令和6年12月17日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
本件は、商標出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は商標法4条1項11号該当性である。……
2 本件審決の理由の要旨
本願商標は、標準文字からなる「珠屋珈琲」と類似するから、商標法4条1項11号に該当する。
3 取消事由
商標の類否判断の誤りによる商標法4条1項11号該当性判断の誤り
第3 当事者の主張
(原告の主張)
1 引用商標の分離観察が許されないこと
(1) 「飲食物の提供」という役務の場合、需要者は、料理の内容、価格、料理人の経歴、原材料、店の雰囲気・立地、接客の良し悪し等、多くの要素を注意深く検討するものであって、屋号や店名に向けられる需要者の注意力は、一般の商品についての商標の場合よりも深く慎重なものとなる。
これを引用商標についていえば、提供される料理名である「珈琲」を取り去って「タマヤ」と略称してしまうと、「珠屋珈琲」であれば看取することができたはずの店の印象や、店主が店名に込めたメッセージの一部が欠落してしまうことになるが、そのようなことはあり得ない。
(2) 「飲食物の提供」の役務においては、珈琲店以外であっても、提供される料理の普通名称を含めた屋号全体が看板に表示され、注文を受ける電話で屋号全体を名乗るのが普通であるから、需要者は、主に提供される飲食物の普通名称を含めた全体を一体不可分のものとして認識、記憶する。
2 引用商標の外観の認定の誤り
(1) 引用商標の外観は「珠屋珈琲」であり、需要者は直ちに漢字4文字からなる外観を知覚するのであって、いったん視認した外形から「珈琲」を取り去って「珠屋」をさらに視認することはあり得ない。
(2) 引用商標は、「珠屋珈琲」を同一の書体、大きさ、間隔で一連一体に表示するものであるから、外観上、常に一連一体のものとして認識、把握される。
3 引用商標の称呼の認定の誤り
(1) 前記1の取引の実情からみて、引用商標は、その全体構成により「タマヤコーヒー」の称呼のみが生じ、「タマヤ」と略称される可能性はない。
(2) 前記2の外観上の強い一体性からみて、引用商標からは、「タマヤコーヒー」という、冗長ではなく、無理なく一気一息に称呼し得る一連の称呼が生じる。
4 類否判断の誤り
以上のとおり、外観においては本願商標の「珠屋」と引用商標の「珠屋珈琲」を、称呼においては本願商標の「タマヤ」と引用商標の「タマヤコーヒー」をそれぞれ比較すべきであるから、いずれも明確に区別することができる。
観念において比較することができないことは、本件審決のとおりである。
したがって、本願商標と引用商標は類似しない。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由(商標の類否判断の誤りによる商標法4条1項11号該当性判断の誤り)について
(1) 判断枠組み
商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品又は役務に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかも、その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決(昭和39年(行ツ)第110号)民集22巻2号399頁参照)。
また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、みだりに分離観察すべきではないが、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えると認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合等、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認められない場合には、その構成部分の一部を抽出し、その部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されると解すべきである(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決(昭和37年(オ)第953号)民集17巻12号1621頁、最高裁平成5年9月10日第二小法廷判決(平成3年(行ツ)第103号)民集47巻7号5009頁、最高裁平成20年9月8日第二小法廷5 判決(平成19年(行ヒ)第223号)裁判集民事228号561頁参照)。
(2) 本願商標について
本願商標は、「珠屋」の漢字を大きく横書きし、その左側に、「珠」の漢字を白抜きで表した円の周囲に図案化された「TAMAYA」の欧文字を配置し、その外側を円で囲んでなる図形を表してなるものであり、これらの文字及び図形がいずれも茶系統の色で表されているものである。
そして、「珠屋」の文字部分と図形部分とは分離して配置されている上、「珠屋」の漢字が大きくはっきりと表されているのに対し、図形部分は全体が「珠屋」の文字部分の漢字一文字よりも小さく、その構成中の文字はさらに小さく表されているものである。
そうすると、本願商標の「珠屋」の文字部分は、本願商標に接する取引者、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えると認められ、本願商標の要部に当たるというべきである。
称呼については、本願商標の要部である「珠屋」の文字部分からは「タマヤ」の称呼が生じ、図形部分からも「タマヤ」の称呼が生じ得る。
観念については、「珠屋」は辞書類に掲載されている成語ではなく、何らかの屋号等の固有名称であると抽象的に観念し得るとしても、特定の観念が生じるとはいえない。
(3) 引用商標について
ア 「珈琲」の文字部分について
引用商標の構成中、「珈琲」の文字部分は、一般消費者に慣れ親しまれ、日常的に摂取されている飲料である「コーヒー」の漢字表記である(乙4)。
そして、引用商標の指定役務中、「飲食物の提供」の役務を提供する業界にあっては、飲食店の名称に主として提供する飲食物の名称である「ステーキ」「ピザ」「ラーメン」等の語を含めたものとする例は多く(乙5~10)、「コーヒーを主とする飲食物の提供」の役務を提供する業界にあっても、例えば「椿屋珈琲」「寿屋珈琲」などのように、「○○珈琲」との構成からなる文字をもって飲食店の名称とする例が多数あると認められ(乙11~31)、広く一般に定着しているといえる。
そうすると、引用商標の「珈琲」の文字部分は、引用商標の指定役務中「コーヒーを主とする飲食物の提供、飲食物の提供」との関係では、その役務において主として提供される飲食物が「コーヒー」であること、すなわち、役務の内容を表示したものと認識させるにとどまるものといえ、出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる。
イ 「珠屋」の文字部分について
引用商標の構成中、「珠屋」の文字部分は、本願商標の「珠屋」の文字部分と同じく、辞書類に掲載されている成語ではなく、何らかの屋号等の固有名称であると抽象的に観念し得るとしても、特定の観念が生じるとはいえない。
そうすると、「珠屋」の文字部分は、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとまではいえないとしても、一定以上の自他役務識別力を有する部分といえる。
また、一般に簡易迅速を尊ぶ取引の実際においては、商標の一部だけによって簡略に称呼、観念されることもしばしばある。「コーヒーを主とする飲食物の提供」の役務を提供する業界においても、例えば「椿屋珈琲」についてのグルメ情報記事(乙11)、「猿田彦珈琲」及び「千成屋珈琲」についての各新聞記事(乙20、23)において、それぞれ「椿屋」「猿田彦」「千成屋」とも記述されているとおり、「珈琲」以外の部分が自他役務識別力を有するような場合には、当該部分のみによって称呼、観念されることがあると認められる。
ウ 分離観察の可否
以上を踏まえると、引用商標「珠屋珈琲」は、「珈琲」の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないのに対し、「珠屋」の部分は一定以上の自他役務識別力を有し、前記の取引の実情をも考慮すると、「珠屋珈琲」が標準文字の漢字4文字からなるひとまとまりの外観を有し、「タマヤコーヒー」の称呼が無理なく一気一息に称呼し得るとしても、分離観察をすることが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとは認められないから、「珠屋」の部分を抽出し、その部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
……
(7) 結論
したがって、本願商標は、商標法4条1項11号に該当するから、本件審決の判断に誤りはない。
知的財産高等裁判所第2部