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珠屋 令和7年(行ケ)第10010号 審決取消請求事件

宇高が、上記の本願商標の登録の依頼を受けたならば、

先行商標の調査を行い、登録5984053号商標「珠屋珈琲」の存在を知ったならば、

上記商標を、そのままの形態で、出願をする事は有り得ません。

どうしても出願して欲しいとの事であれば、出願しますが、知的財産高等裁判所まで持ち込んで争う事件ではないです。はっきり言って無駄遣いです。

出願するにしても、宇高ならば、上記商標の図形部分(○の中に「珠」と「TAMAYA」とが記された図形部分)だけにするとか、

「珠」の一部と「屋」の一部とを重ね合わせるとか、

漢字「珠」を別の漢字、例えば「玉」にする(出願人が株式会社珠屋ですから、是は有り得ない?)

と言った工夫を提案します。

そうしないと、商標登録は不可能です。

尤も、宇高は、指定商品がタオルにおいて、「XXXXタオル」と「XXXX」とは誤認混同が起き得ないとして、「XXXXタオル」を登録に持ち込みました。しかし、これは「百千万劫難遭遇」です。

宇高は、「プレミアム5」と「プレミアム」とは誤認混同が起き得ないとして、「プレミアム5」を登録に持ち込みました。しかし、これは、「プレミアム」は識別力が弱い(識別力が無い)と言う特殊性から、登録が認められたと考えております。

下記の判例『「珠屋」の文字部分は、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとまではいえないとしても、一定以上の自他役務識別力を有する部分といえる。』にも合致しております。

 令和7年(行ケ)第10010号 審決取消請求事件
主 文
1 原告の請求を棄却する。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が不服2024-13830号事件について令和6年12月17日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
本件は、商標出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は商標法4条1項11号該当性である。……

2 本件審決の理由の要旨
本願商標は、標準文字からなる「珠屋珈琲」と類似するから、商標法4条1項11号に該当する。
3 取消事由
商標の類否判断の誤りによる商標法4条1項11号該当性判断の誤り

第3 当事者の主張
(原告の主張)
1 引用商標の分離観察が許されないこと
(1) 「飲食物の提供」という役務の場合、需要者は、料理の内容、価格、料理人の経歴、原材料、店の雰囲気・立地、接客の良し悪し等、多くの要素を注意深く検討するものであって、屋号や店名に向けられる需要者の注意力は、一般の商品についての商標の場合よりも深く慎重なものとなる。

 これを引用商標についていえば、提供される料理名である「珈琲」を取り去って「タマヤ」と略称してしまうと、「珠屋珈琲」であれば看取することができたはずの店の印象や、店主が店名に込めたメッセージの一部が欠落してしまうことになるが、そのようなことはあり得ない。
(2) 「飲食物の提供」の役務においては、珈琲店以外であっても、提供される料理の普通名称を含めた屋号全体が看板に表示され、注文を受ける電話で屋号全体を名乗るのが普通であるから、需要者は、主に提供される飲食物の普通名称を含めた全体を一体不可分のものとして認識、記憶する。

2 引用商標の外観の認定の誤り
(1) 引用商標の外観は「珠屋珈琲」であり、需要者は直ちに漢字4文字からなる外観を知覚するのであって、いったん視認した外形から「珈琲」を取り去って「珠屋」をさらに視認することはあり得ない。
(2) 引用商標は、「珠屋珈琲」を同一の書体、大きさ、間隔で一連一体に表示するものであるから、外観上、常に一連一体のものとして認識、把握される。

3 引用商標の称呼の認定の誤り
(1) 前記1の取引の実情からみて、引用商標は、その全体構成により「タマヤコーヒー」の称呼のみが生じ、「タマヤ」と略称される可能性はない。
(2) 前記2の外観上の強い一体性からみて、引用商標からは、「タマヤコーヒー」という、冗長ではなく、無理なく一気一息に称呼し得る一連の称呼が生じる。

4 類否判断の誤り
以上のとおり、外観においては本願商標の「珠屋」と引用商標の「珠屋珈琲」を、称呼においては本願商標の「タマヤ」と引用商標の「タマヤコーヒー」をそれぞれ比較すべきであるから、いずれも明確に区別することができる。
観念において比較することができないことは、本件審決のとおりである。
したがって、本願商標と引用商標は類似しない。

第4 当裁判所の判断
1 取消事由(商標の類否判断の誤りによる商標法4条1項11号該当性判断の誤り)について
(1) 判断枠組み
商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品又は役務に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかも、その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決(昭和39年(行ツ)第110号)民集22巻2号399頁参照)。
また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、みだりに分離観察すべきではないが、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えると認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合等、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認められない場合には、その構成部分の一部を抽出し、その部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されると解すべきである(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決(昭和37年(オ)第953号)民集17巻12号1621頁、最高裁平成5年9月10日第二小法廷判決(平成3年(行ツ)第103号)民集47巻7号5009頁、最高裁平成20年9月8日第二小法廷5 判決(平成19年(行ヒ)第223号)裁判集民事228号561頁参照)。

(2) 本願商標について
本願商標は、「珠屋」の漢字を大きく横書きし、その左側に、「珠」の漢字を白抜きで表した円の周囲に図案化された「TAMAYA」の欧文字を配置し、その外側を円で囲んでなる図形を表してなるものであり、これらの文字及び図形がいずれも茶系統の色で表されているものである。
そして、「珠屋」の文字部分と図形部分とは分離して配置されている上、「珠屋」の漢字が大きくはっきりと表されているのに対し、図形部分は全体が「珠屋」の文字部分の漢字一文字よりも小さく、その構成中の文字はさらに小さく表されているものである。
そうすると、本願商標の「珠屋」の文字部分は、本願商標に接する取引者、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えると認められ、本願商標の要部に当たるというべきである。
称呼については、本願商標の要部である「珠屋」の文字部分からは「タマヤ」の称呼が生じ、図形部分からも「タマヤ」の称呼が生じ得る。
観念については、「珠屋」は辞書類に掲載されている成語ではなく、何らかの屋号等の固有名称であると抽象的に観念し得るとしても、特定の観念が生じるとはいえない。

(3) 引用商標について
ア 「珈琲」の文字部分について
引用商標の構成中、「珈琲」の文字部分は、一般消費者に慣れ親しまれ、日常的に摂取されている飲料である「コーヒー」の漢字表記である(乙4)。
そして、引用商標の指定役務中、「飲食物の提供」の役務を提供する業界にあっては、飲食店の名称に主として提供する飲食物の名称である「ステーキ」「ピザ」「ラーメン」等の語を含めたものとする例は多く(乙5~10)、「コーヒーを主とする飲食物の提供」の役務を提供する業界にあっても、例えば「椿屋珈琲」「寿屋珈琲」などのように、「○○珈琲」との構成からなる文字をもって飲食店の名称とする例が多数あると認められ(乙11~31)、広く一般に定着しているといえる。

そうすると、引用商標の「珈琲」の文字部分は、引用商標の指定役務中「コーヒーを主とする飲食物の提供、飲食物の提供」との関係では、その役務において主として提供される飲食物が「コーヒー」であること、すなわち、役務の内容を表示したものと認識させるにとどまるものといえ、出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる。

イ 「珠屋」の文字部分について
引用商標の構成中、「珠屋」の文字部分は、本願商標の「珠屋」の文字部分と同じく、辞書類に掲載されている成語ではなく、何らかの屋号等の固有名称であると抽象的に観念し得るとしても、特定の観念が生じるとはいえない。
そうすると、「珠屋」の文字部分は、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとまではいえないとしても、一定以上の自他役務識別力を有する部分といえる。
また、一般に簡易迅速を尊ぶ取引の実際においては、商標の一部だけによって簡略に称呼、観念されることもしばしばある。「コーヒーを主とする飲食物の提供」の役務を提供する業界においても、例えば「椿屋珈琲」についてのグルメ情報記事(乙11)、「猿田彦珈琲」及び「千成屋珈琲」についての各新聞記事(乙20、23)において、それぞれ「椿屋」「猿田彦」「千成屋」とも記述されているとおり、「珈琲」以外の部分が自他役務識別力を有するような場合には、当該部分のみによって称呼、観念されることがあると認められる。

ウ 分離観察の可否
以上を踏まえると、引用商標「珠屋珈琲」は、「珈琲」の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないのに対し、「珠屋」の部分は一定以上の自他役務識別力を有し、前記の取引の実情をも考慮すると、「珠屋珈琲」が標準文字の漢字4文字からなるひとまとまりの外観を有し、「タマヤコーヒー」の称呼が無理なく一気一息に称呼し得るとしても、分離観察をすることが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとは認められないから、「珠屋」の部分を抽出し、その部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
……

(7) 結論
したがって、本願商標は、商標法4条1項11号に該当するから、本件審決の判断に誤りはない。

                 知的財産高等裁判所第2部

登録第5006976号商標:恋苺
登録第6438678号商標:あわ恋いちご

「あわ恋いちご」と登録第5006976号商標「恋苺」との間で誤認・混同が起きるか否かが争われました。

被告は徳島県の苺栽培者であった事から「あわ恋いちご」の「あわ」に「阿波」「徳島県」を連想させたい思惑が有ったように思われますが、この思惑が本件訴訟では致命傷になりました。

被告が使用態様「パッケージ」に注意していたならば、即ち、

パッケージに「徳島県産」「阿波」「阿波踊り」を記載せず、

「淡い恋のような味がするあわ恋いちご」を記載していたならば、

被告は負けなかったでしょうね。

本件は、商標のみでなく、その使用形態に注意が必用と言う事例です。

  令和6年(ワ)第5007号 商標権侵害差止請求事件

主 文

1 被告は、いちご商品に別紙被告標章目録記載の標章を付し、同商品を販売してはならない。2 被告は、別紙被告標章目録記載の標章を付した前項記載の商品から、同標章を抹消せよ。
3 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求   主文同旨

第2 事案の概要

(1) 本件商標:商標登録第5006976号に係る商標「恋苺」

(2) 被告標章:上記の標章

第3 争点に関する当事者の主張

1 争点1(本件商標と被告標章が類似するか)について

【原告の主張】
(1) 被告標章の要部被告標章は、平仮名2文字「あわ」、漢字1文字「恋」、平仮名3文字「いちご」で構成される。冒頭の「あわ」は、3文字目が「恋」という独立した意味の漢字であるから、「あわ」部分が一つのまとまりとして受け止められ、取引者・需要者において徳島地方の旧称「阿波」を想起させる。そうすると、「あわ」の部分は、商品の産地又は販売地を意味するにすぎず、商品の出所識別機能を有さない。よって、被告標章の要部は、「恋いちご」の構成部分である。

【被告の主張】
(1) 被告標章の要部
複数の構成部分を組み合わせた結合商標について、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、原則として許されない。被告標章は「あわ」「恋」「いちご」から構成されるが、各部分は同じ書体、文字の大きさで等間隔に一行で表記されているから、一連の語の全体が識別機能を果たし、「恋いちご」のみが強く支配的な印象を与えるものではない。よって、「恋いちご」部分のみを抽出して類否判断をすべきではなく、被告標章の要部は「あわ恋いちご」全体である。
被告標章は、「あわ」「恋」「いちご」から構成され、「あわ」の部分からは、地方名称の「阿波」のみならず「淡」「泡」などが想起され得るが、「恋」と組み合わせられていることや被告標章の字体が丸みを帯びた書体であることから、「あわ恋」部分からは「淡い恋」が想起される。実際、「あわ恋」は、ある限られた人やシチュエーションでないと経験できないとの認識で命名されたものであり、……

第4 判断
1 争点1(本件商標と被告標章が類似するか)について
(1) 判断手法
商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品又は役務に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、その商品の取引の実情を明らかにし得るかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民22巻2号399頁、最高裁平成6年(オ)第1102号同9年3月11 日第三小法廷判決・民集51巻3号1055頁参照)。そして、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合のほか、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合には、その構成部分の一部を抽出し、当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)10 第223号同20年9月8日第二小法廷判決・集民228号561頁参照)。

(2) 本件商標と被告標章の対比
ア 分離観察の可否
() 本件商標は、明朝体風の漢字2文字(「恋」「苺」)が縦書きされたものであり、各文字の大きさ及び色彩は同一である。
() 被告標章は、やや丸みのあるPOP体風の平仮名2文字(「あわ」)漢字1文字(「恋」)及び平仮名3文字(「いちご」)が、等間隔にやや円弧状に横書きされたもので、各文字の大きさ及び色彩は同一であり、まとまりよく構成されている。他方、被告標章のうち「あわ」部分については、「あわ」には「泡、粟、安房(千葉県南部の旧称)、阿波(徳島県の旧称)」などの複数の意味があり、平仮名表記であるがゆえに多義的なものといえるところ、指定商品との関係において、「あわ」が、例えば「泡」の意味である場合、「あわ」部分も自他商品の識別力を有し得るとはいえるが、「あわ」が「阿波」及び「安房」の意味である場合、「あわ」部分は地域を示す普通名称にすぎない上、産地表示などが広く行われているいちごを指定商品としていることからも、上記識別力があるとはいえない。そうすると、被告標章については、需要者において、「あわ」部分が上記のように複数ある意味のうち、「泡」のように一定の識別力を持ち得る意味として受け取られるであろう取引の実情があるのであれば、「あわ」の識別力が否定できない結果、「恋いちご」の部分のみを抽出した類否判断が許されないことも想定される一方、被告標章が付されたパッケージの態様など取引の実情に照らし、需要者において、「あわ」が識別力を伴わない地域名称を意味し、産地や販売地を表示するものとして受け取られるのであれば、「恋いちご」の部分を抽出して本件商標と比較検討することが許されるものといえる(標章の分離観察の可否も、需要者の観点から商標類否を判断する過程そのものであるところ、取引の実情を踏まえるべきものといえる。)。

そして、本件の取引の実情をみると、被告各商品のパッケージには、被告標章のほかに、「徳島県産」とのいちごの産地を示す文字や「徳島県産 阿波のいちご」との文字が付記され、徳島県の伝統芸能である阿波踊りの踊り子や「阿波」と記載された提灯のイラストが目立つ態様で描かれている(甲3、4)ところ、被告標章の「あわ」の部分につき、漢字ではなく、平仮名表記とはいえ、需要者に対し、地域名称である「阿波」を意味し、産地を表示しているものと想起させる取引の実情があるといえるから、被告標章のうち「あわ」部分の識別力は否定され、「恋いちご」部分を抽出して、本件商標と比較検討することができるというべきである。

イ 原告商標と被告標章の分離部分の類否の検討
本件商標と被告標章の「恋いちご」部分を対比すると、外観は上記ア()のとおりであり、冒頭の「恋」の漢字において共通する一方、書体や「いちご」部分が漢字であるか平仮名であるかの違いこそあるものの、呼称としては、本件商標が「レンバイ」「レンマイ」「コイイチゴ」であるのに対し、被告標章の「恋いちご」部分も「コイイチゴ」であって、「コイイチゴ」の称呼において同一である。……被告標章の「恋いちご」部分に接した需要者(商品の取引者や消費者)は、本件商標と出所を誤認混同するおそれがあると認められ、両者は全体として類似するといえる。

第5 結論
以上によれば、原告の請求は理由があるからこれを認容し、主文のとおり判決する。

              大阪地方裁判所第21民事部

日本製紙クレシア株式会社⇔大王製紙株式会社

中心気圧:940hPa,最大風速:50m/s,時速:30km/h,9日現在:八丈島の東約120kmの台風22号(HALONG)です。伊豆諸島では線状降水帯による大雨との予報です。先日の線状降水帯による大雨で我が家の裏山では土砂崩れが起きました。台風下の皆様には大変な事とお察し申し上げます。
宇高は12日に瑞牆山に登る予定で台風が気になりましたが、予報からすると登山はOKです。

令和4年(ワ)第22517号 特許権侵害差止等請求事件

 日本製紙クレシア株式会社(3倍長トイレットロールペーパー):大王製紙株式会社(3.2倍長トイレットロールペーパー)の間で争われておりました特許権侵害訴訟事件(令和4年(ワ)第22517号特許権侵害差止等請求事件)において、
東京地裁の判決は特許権者(日本製紙クレシア株式会社)敗訴でした。
控訴は有り得ないと宇高は申しておりましたが、特許権者は控訴してました。

しかし、知的財産高等裁判所も、東京地裁と同じ結果、即ち、特許権侵害成立せずの判決でした。
判決文が未だ公開になっていないので、詳細は不明ですが、宇高は一審と同じ内容と考えております。

宇高は今回の訴訟で原告が提出した証拠資料が杜撰と感じてます。
特許権者および代理人は証拠資料の提出前に内容をチェックしたのかと疑問です。
イ号製品のエンボス形状、即ち、うねり曲線(添付ファイル)を一目したのみで、イ号製品が侵害しているとは断定できない事が明らかです

これでは特許権者が敗訴も当然でしょう。 原告・特許権者は無駄な費用を掛けたなあと感じております。

それから、注意しなければならなのは、宇高がセミナー「特許権侵害を想定した権利者側・侵害者側の特許請求の範囲・明細書の書き方および読み方」でも指摘している「クレイムにおける権利範囲(技術的範囲)の広狭」のみでなく、「侵害確認が容易か否か」「権利行使が容易か否か」も重要であると言う事です。
一読するのみでは本件特許(特許第6735251号)のクレイムにおける何が問題かと思われるかも知れませんが、今回の特許では「侵害確認が容易か否か」「権利行使が容易か否か」の観点からのクレイム作成に問題が有ったようにも思われます…

原告(特許権者)は控訴でしたが、一審で提出した資料は無かった事には出来ないので、この提出済みの資料を如何に矛盾なく処理するかが迫られたでしょう。

原告(特許権者)側が自ら勝手に倒れて呉れましたから、被告側にとっては対応が楽な訴訟でしょう。

特許第6735251号
【請求項1】
2プライに重ねられ、エンボスを有するトイレットペーパーをロール状に巻き取ったトイレットロールであって、
前記エンボスのエンボス深さが0.05~0.40mm、巻固さが0.3~1.4mm、巻長が63~103m、巻直径が105~134mm、巻密度が1.2~2.0m/cmであり、
前記トイレットペーパーの比容積が、4.0~6.5cm/gであり、前記エンボス1個当たりの面積が、2.5~6.0mmである
トイレットロール。

         判   決
原告    日本製紙クレシア株式会社
被告    大王製紙株式会社
         主      
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は、別紙物件目録記載の各製品を製造し、譲渡し、又は譲渡の申出をしてはならない。
2 被告は、その占有に係る前項記載の製品を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、3300万円及びこれに対する令和4年9月21日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第4 当裁判所の判断
2 構成要件1Bの充足性(争点1-1-2)について
(1) 構成要件1Bは、「前記エンボスのエンボス深さが0.05~0.40mm」というものであり、本件発明1のトイレットペーパーのエンボスのエンボス深さを定めている。

本件発明1のトイレットペーパーのエンボスのエンボス深さについては、本件明細書1の【0020】から【0025】までにその測定方法に関する記載があり、そこでは、【図4】、【図5】(a),(b)が参照されている。それらによれば、構成要件1Bのエンボス深さは、おおむね、以下のように測定されたものである。……

図5(b)の高さプロファイルは、実際のトイレットぺーパーの試料表面の凹凸を示す(測定)断面曲線Sであるが、トイレットペーパーの表面にある繊維塊などのノイズも含んでいるから、図6に示すように、高さプロファイルの断面曲線Sから…低減フィルタによって除去して輪郭曲線Wを計算する。この輪郭曲線Wのうち、上に凸となる2つの変曲点P1,P2と、変曲点P1,P2ではさまれる最小値を求め、これを深さの最小値Minとする。変曲点P1,P2の深さの値の平均値を深さの最大値Maxとする。そして、エンボス深さD=最大値Max-最小値Minとする。…

図5(b)

図6

(3) 原告は、各被告製品について、エンボス深さD、エンボス面積を測定した結果として実験結果報告書(甲10。以下「甲10報告書」という。)を提出する。

被告製品

……原告は、甲10報告書の測定結果に基づき、各被告製品が、構成要件1Bを充足する旨主張する。……甲51報告書では、P1,P2の特定について、「なお、ワンショット画像を見るとエンボスの位置やおおよその幅が確認できる。そこで、ワンショット画像やワンショット画像上に重ねて表示される断面曲線とを見ながら、断面曲線を観察することで、断面曲線のどこがエンボスに対応しているのかが理解できる。例えば、以下のワンショット画像の黄色の枠内にあるエンボスのエンボス深さを測定する場合、黄色の枠内に測定対象のエンボスがあり、これが断面曲線でいえば緑色の枠内の部分に対応することが理解できる。そこで、この位置における変曲点(P1,P2)を決定すると、「×」で示した箇所となる(各断面写真で示した「×」はこのようにして決定している。)。」と記載されている。…これらの点で、甲10報告書でエンボス深さDとされているのは、本件明細書1記載の測定方法によるエンボス深さDであるということはできないものである。…そして、甲51報告書によれば、各被告製品については、原告がエンボスとして特定した部分の中央に、断面曲線で上に凸の曲率極大点が認められるなど、そのエンボスが本件発明1のエンボス深さDを測定する際に想定されていた凹部形状のものであるかが必ずしも明らかではないほか、X-Y平面上のエンボスの高さプロファイルによって、エンボスの周縁frやその最長部aがどこに位置するのかを確定できるものとは必ずしもいえない。そうすると、そのようなエンボスが付された各被告製品のトイレットロールについてエンボスを10個選んで測定を行い、それらの平均値として一定の深さDを求めたとしても、本件発明1におけるエンボス深さDが測定できたということはできない。

宇高は、原告・特許権者が、どうして、こんなデータの資料を出したのだろうと不思議です。これでは勝利を放棄と言ってるも同然です。

(7) 以上によれば、原告測定方法は、本件明細書1に記載されたエンボス深さの測定方法とはいえず、原告測定方法に基づいた甲10報告書によって、各被告製品が構成要件1Bを充足するとは認めることはできない。

AMAZON TECHNOLOGIES,INC.対WanPay Digital Marketing Co.,Ltd.

左上の図形商標は、台湾において、AMAZON TECHNOLOGIES,INC.が保有する登録商標です。

右上の図形商標は、台湾において、WanPay Digital Marketing Co.,Ltd.が出願し、登録になった商標です。

指定商品は、共に、コンピューターソフトウェアが含まれております。

AMAZON TECHNOLOGIES,INC.は、WanPay Digital Marketing Co.,Ltd.が出願・登録になった上記右上の登録商標に対して、AMAZON TECHNOLOGIES,INC.が保有・登録の左上の商標に類似するとの理由で、異議申立を行いました。この異議が認められました。

WanPay Digital Marketing Co.,Ltd.は異議申立による登録無効の決定を不服として控訴を提起しましたが、是は却下されました。是を受けて、WanPay Digital Marketing Co.,Ltd.は知的財産・商事裁判所に行政訴訟を提起し、第一審において、台湾特許庁の決定が覆され、双方の商標は類似していないとして、原処分を取り消す判決が下されました。

この判決に不服のAMAZON TECHNOLOGIES,INC.は最高裁判所に上訴しました。
その結果は、
知的財産・商事裁判所の判決は破棄、審理の差戻しが命じられました。

知的財産・商事裁判所による差戻し審では、最終的に、WanPay Digital Marketing Co.,Ltd.の主張は退けられ、AMAZON TECHNOLOGIES,INC.が勝訴の判決が下りました

特徴部分が此処まで似てると、AMAZON TECHNOLOGIES,INC.はパクられたと思ってしまうのも無理からぬかと思われます。

WanPay Digital Marketing Co.,Ltd.の図形にはダブルチェックマークが入っているから、両者は識別できるとも謂えますが、
商標の一部が他人の商標の全部、他人の商標の主要識別部分を含むものは、類似の程度が高いと認識されるでしょうね。

上記事件は台湾における取扱いですが、日本でも同様でしょう。

 

2

9月6日に北アルプスの涸沢に登りました。朝3時に起床で4時に自宅を出発です。中央道が渋滞で奥飛騨温泉郷・平湯温泉に到着したのが9時40分頃、急いで上高地行きのバスに乗り、上高地に到着が10時半頃でした。上高地を出発して3時間余りで横尾山荘に14時前に到着。涸沢の小屋に泊まらない者は、涸沢向けての横尾山荘からの出発は14時がタイムリミットで、途中の本谷橋で引き返して下さいとの忠告で、取り敢えず、横尾山荘に荷物を預けて急いで出発。当日は山登りには絶好の日和です。ヘッドライトを用意してましたが、暗くなる前には横尾山荘に帰って来る為、標準ペース(登り3時間で下り2時間)の倍の速度で登り始めました。目的地の涸沢の手前でタイムオーバーで下山せざるを得ませんでした。急ピッチでの上り下りで足を多少痛めたので、食事前に入浴して痛めた足をほぐしました。横尾山荘の食事は山小屋にしては上出来でした。写真は横尾山荘から上高地に下りる途中での前穂高です。こうして見てると前穂高の厳しさを実感します。 下山後には平湯温泉・ひらゆの森で1時間ほど日帰り入浴で楽しみました。帰宅は24時直前。

さて、知財情報です。今回の知財情報は商標に関する判例です。

令和6年(行ケ)第10107号 審決取消請求事件

主 文
1 特許庁が無効2023-890059号事件について令和6年11 月14日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。 

「キリンホールディングス株式会社(原告)」が、キリンフーズ株式会社(被告)の登録商標「キリンの図形+キリンフーズ」に対して無効審判を請求したものの、無効が不成立であったので、知財高裁に出訴して争われた事件です。

「キリン」の著名性からして、宇高は上記知財高裁の判決が妥当なものと考えます。

宇高が「キリンフーズ」から本件商標の依頼を受けた場合、クライアントには、登録になっても、キリンホールディングス株式会社からのクレームに拠って登録無効になる確率が高いから、変更した方が良いのではと言うアドバイスをしたでしょうね。
食品関連の商品において、
「キリンの図形+キリンフーズ」が登録になれば、キリンホールディングス株式会社は費用がどれだけ掛かろうとも登録阻止に全力を挙げるであろう事が予想されます。

 

令和7年(行ケ)第10025号 審決取消請求事件

令和7年(行ケ)第10026号 審決取消請求事件

主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

対象役務「ファッションショーの企画・運営等」に対する商標沖縄コレクション」「九州コレクション」は「沖縄で開催される有名デザイナーなどの発表するファッションショー」「九州で開催される有名デザイナーなどの発表するファッションショー」ほどの意味合いを認識させるに止まるから、沖縄コレクション」「九州コレクション」は、役務の質(内容)を表示するにすぎず、自他役務識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである旨の特許庁の審決に対して、
出願人が知財高裁に審決取消訴訟を提起した事件です。

「ミラノコレクション」「パリコレクション」「東京コレクション」と言った言葉がファッションショーの世界で周知ですから、特許庁や知財高裁の判断は妥当でしょう。

宇高が斯のような商標の出願依頼を受けた場合、ひょっとして登録になるかも知れませんが、登録にならない確率が高いとアドバイスしたでしょう。
それでもと謂われた場合、出願は致しますが、拒絶を受けた場合には、拒絶査定不服の審判、更には知財高裁への
出訴はしないですね。費用の無駄遣いでしょう。

 

令和6年(行ケ)第10103号 審決取消請求事件

主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

指定商品「ウィスキー」についての商標「シングルモルト金沢」について登録が争われた事例です。

う~ん 知財高裁まで出訴して登録を争う事件でしょうかね。


シングルモルトが一つの蒸溜所で製造されたモルト(大麦麦芽)のみを原料として造られたウイスキーである事は周知ですからね
案の定、
シングルモルト金沢」は石川県金沢市にある蒸留所で生産されたシングルモルトウィスキー」を認識させるにすぎず、これを指定商品に使用するときは、商品の品質、産地を普通に 用いられる方法で表示したものと理解させるにすぎないのであり、自他商品識別力を欠く旨の判断です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知財情報

南アルプス・鳳凰三山・薬師岳に登りました。山の朝夕は寒い位の温度でした。昼間と朝・夕の温度差に驚きます。
上の写真は午前4時半頃の太陽が雲に遮られてますが朝日が昇る時の山小屋近くからの写真で、下の写真は薬師岳に行く途中の富士山の写真です。雲海が素晴らしかったです。 

令和6年(ネ)第10074号損害賠償請求事件
(原審:令和5年(ワ)第70407号)

第6815560号特許発明は、

「【請求項1】
 
シート状部材を有して構成され、
 電子タバコの長手方向を第1方向としたとき、前記シート状部材に前記第1方向に沿って切込みが形成され、
 前記切込みは、前記シート状部材の一の表面に前記シート状部材を貫通しない深さで形成されている電子タバコ用充填物。」
です。

     111: 電子タバコ用充填物  F: 切込み

本件訴訟において、
一審の東京地裁でも、二審の知財高裁でも、
被告製品は構成要件B「切込み」を充足せず、本件発明の技術的範囲に属しないものと判断する。

その理由は、次のとおり当審における争点1-1についての控訴人の補充的主張に対する判断を加えるほか、原判決「事実及び理由」の第3の1(24頁~)の説示のとおりであるから、これを引用する。

1 特許発明の技術的範囲は、願書に添付された特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならず(特許法70条1項)、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとされている(同条2項)。

控訴人は、原判決が、構成要件Bの「切込み」の意義について、本件明細書の特定の記載に限定して考慮したものであり、特許請求の範囲の記載自体からは「切込み」の形成手段等が明らかでないとすれば、「切込み」の形成手段を特定のものに限定すべき理由はない旨主張する。

しかし、原判決は、特許請求の範囲における構成要件Bの「切込み」の意義が明らかでないことから本件明細書の記載全体を参酌してこれを解釈したものであって、一般的な意味が明らかなものについて本件明細書の特定の記載に限定して考慮したわけではないから、控訴人の主張はその前提を欠くものである。

2 控訴人は、各辞書の記載によれば、「切込み」は、「切目」(きれーめ、きりーめ)と同義の名詞であり、「切れたところ」を意味し、刃物を用いなくても「切れたところ」が形成される場合があることは自明である旨主張する。

各種辞書の「切込み」に関連する事項の記載は、第3の1(2)アにおいて控訴人が主張するとおりであるが、「切込み」については、切り込む(()())、「切り目を入れる」(())、「切る」(())という能動的な行為が想定され、さらに、それが刃物によることを明示する例が複数存在する(()())。また、「切目」(きれーめ)と、「切目」(きりーめ)を比較すると、後者が、より「切る」行為と結び付けられているところ、「切込み」について参照されているのは「切目」(きりーめ)の方である(()())。

このようなところからすれば、各種辞書の記載から、「切込み」とは、刃物を用いて人為的・能動的に「切り目」ないし「切れ目」が形成された構造ないし状態を意味するとした原判決の説示は、相当なものである。

3 控訴人は、本件明細書に記載されたカッター刃、カミソリの刃、ロータリーカッター等は例示にとどまる旨主張する。しかし、前記2の「切込み」の辞書的意義と、本件明細書において刃物以外による「切込み」の形成手段について記載も示唆もないことに鑑みれば、当業者は、「切込み」が前記2のような意味を有すると理解すると解されるから、控訴人の主張は採用できない。(宇高は斯の個所の論理は不適切だろうと考えてます。

4 被告製品において、たばこスティック(ロッド)の長手方向に沿ってたばこ基体の表面に略平行に3本形成された筋状部分は捲縮加工工程における捲縮条件を制御することにより形成されたものであり、刃物によって形成されたものではないから、被告製品は構成要件Bを充足しない

斯の判決を読んで不思議に思わないでしょうか?
宇高は「切込み」の上位概念の適切な単語が見出せなかったが故に、「切込み」を使用したに過ぎないであろうと考えました。

だから、宇高は、原告・控訴人が、何故、「均等論」を主張しなかったのだろうと不思議でした。

「切込み」が、カッター刃に拠って出来たものであろうが、捲縮加工に拠って出来たものであろうが、その作用・効果は同等である旨を、何故、主張しなかったのだろうと不思議でした。

均等論を主張すれば、原告・控訴人が勝訴したのにと不思議でした。

ところで、裁判所は、全く、取り上げていなかったのですが、

被告は、
「切込み」に関する原告・特許出願人の意見書においての主張『引用文献1には、本願発明のシート状部材を貫通しない「切込み」についての開示はありません。引用文献1には、シート状部材を貫通しない窪み等に関し、均質化タバコ材料のテクスチャ加工シートは、複数の離間した窪みを含む点(段落0031など)、均質化タバコ材料のテクスチャ加工シートに実質的なリッジまたはコルゲーション(段落0033など)が形成される点が記載されています。しかし、引用文献1には、窪み、リッジ、コルゲーション等が切込みとして形成される点、例えば、窪み等が、シートをカッター等により切断して形成される点の開示や示唆は存在しません
を主張しております。

この被告の主張が裁判官によって採り上げられたか否かは明確では有りませんが、
東京地裁も知財高裁も、原告・特許出願人の意見書においての主張から、被告の製品は『刃物を用いて人為的・能動的に「切り目」ないし「切れ目」が形成』に該当しないと判断したのだろうと思われます。

そして、本件特許出願に際しての意見書における特許出願人・原告の主張に基づけば、「辞書の記載から、「切込み」とは、刃物を用いて人為的・能動的に「切り目」ないし「切れ目」が形成された構造ないし状態を意味」と言った「言葉遊び」しなくても済んだと思うのですが…

意見書における特許出願人の主張を鑑みますと、原告・控訴人が均等論を主張しなかったのも頷けます。

なぜならば、均等論を主張した時点で、被告・被控訴人は均等の第5要件「対象製品等が特許発明の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がな いこと(特段の事情)」を持ち出し、均等論は成立せずとの結論になったでしょうから…。

宇高は、均等論を主張しなかった時点で、即ち、訴訟を提起しようと考えた時点において、原告・控訴人は本件訴訟に勝ち目が無い事を理解していたであろうと思うのですが…

尤も、宇高は原告が上記の点を必ず検討したと思うのですが、どうもそうではなさそうです。

なぜならば、宇高は、原告・特許権者が上記の点を検討していたならば、勝訴は難しい事を理解・提訴しなかったのではと思うからです。

尚、拒絶理由通知に際して、特許出願人・代理人が『引用文献1には、窪み、リッジ、コルゲーション等が切込みとして形成される点、例えば、窪み等が、シートをカッター等により切断して形成される点の開示や示唆は存在しません。』を主張してます。斯の主張は、特許を勝ち取る為には主張せざるを得なかっただろうと宇高は考えます。

なぜならば、宇高は、上記主張をしなかった場合には、本願発明の「切込み」と引用文献1の「窪み、コルゲーション等」は同等と見做され、本件特許は成立しなかっただろうと考えるからです。

見出し

雨がパラパラの日曜日に沼津に在る沼津アルプスに行って来ました。沼津アルプスは高々400m程度の低山ですが、ロープを持たねば上り下り出来ない個所も有り、アップダウンが厳しく、それなりにアルプスの名を汚しません。しかも、沼津湾を眺めながら歩く個所も有り、楽しい一日でした。

 

令和6年(行ケ)第10090号審決取消請求事件

面白いと言うと館林市に怒られそうです…

館林市マスコットキャラクター・その愛称「ぽんちゃん」が知財高裁で争われました。

 

館林市に住む原告が「ぽんちゃん」を商標出願しました。

特許庁・審査官は、標準文字で書された「ぽんちゃん」が商標法4条1項6号(公益団体の著名な商標)、商標法4条1項7号(公序良俗違反)に該当するとして拒絶査定しました。

出願人は拒絶査定に不服の審判を請求しました。

特許庁・審判官は「ぽんちゃん」が商標法4条1項6号(公益団体の著名な商標)に該当すると認定しました。審判の過程では、商標法4条1項7号も争われましたが、審決では「本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当するから、これを登録することはできない。」であって、商標法4条1項7号が挙げられませんでした。審判官は商標法4条1項7号での拒絶は無理だと考えたのでしょう?

 

出願人は斯の審決に不服で知財高裁に出訴しました。

知財高裁では商標法第4条第1項第6号に該当するか否かが争われました。

その結果、争われた「著名性」が満たされていない旨の判決を知財高裁は下しました。その理由が、「ぽんちゃん」は館林市では有名かも知れないが、群馬県まで広げてみると著名とまでは謂えないとの事です。

知財高裁の考えは次の通りです。

『商標法4条1項6号は、商標登録を受けることができない商標として、「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」を規定する。その趣旨は、同号に掲げる団体の公益性に鑑み、その権威、信用を尊重するとともに、出所の混同を防いで取引者、需要者の利益を保護することにあると解される。このような趣旨に照らすと、同号にいう「著名なもの」というために、必ずしも、日本全国において広く知られていることを要するものとまでは解されない。すなわち、同号に掲げる団体や事業の地域性を考慮して、著名性の認定に当たり、地理的範囲を限定して考慮する余地があるといえる。 他方、同号に掲げる団体や事業を表示する標章は極めて多数にわたるために、同号は、対象となる標章を「著名なもの」と限定しているのであって、商標法上の他の規定(例えば、商標法4条1項8号)と完全に整合的に解すべき必要まではないが、少なくとも「著名」の字義に反するような解釈をすることは相当でない。このことは、著名性の地理的範囲についても同様であって、公益事業等を示す標章として特定の地域でのみ知られている標章と同一又は類似する商標の登録を禁止するとなると、本来であれば一般的に認められるべきはずの、商標権を取得して全国的に当該商標を使用する権利を過度に制約することになりかねない。  以上によると、商標法4条1項6号にいう「著名なもの」というためには、同号に掲げる団体や事業の地域性に照らし、必ずしも日本全国にわたって広く認識されている必要はないが、なお相応の規模の地理的範囲において広く認識されていることを要するものと解するのが相当である。

この知財高裁の判決を受けて、再度、拒絶査定不服の審判で争われているようです。

特許庁は、今度は、どう言う理由付けで拒絶に持ち込もうとするのかが興味深いですね。商標法4条1項7号(公序良俗違反)を挙げたいでしょうが、ちょっと難しい…

館林市が、さっさと、出願してれば良かったのでしょうが…。そうは言っても後の祭りです。

 

 

 

 

知財情報

連休中、蔵王・熊野岳に登りました。4日は視界も悪く風速20m/s故にモスキート級の連れ合いが吹き飛ばされそうで途中下山、再度挑戦の5日は風速10m/s程度なので行ける所までと言う事で登り始めました。頂上まで行けたのは良いのですが、蔵王・御釡の湖面はエメラルドグリーンではなく、前日の雪で白濁になっておりました。

 

令和6年(ネ)第10026号特許権侵害行為差止等請求控訴事件

判決文を読むと特許第4974971号の権利者の口惜しさが良く判ります。

【請求項1】
  ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、N-置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種の環構造を主鎖に有する熱可塑性アクリル樹脂と、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する分子量が700以上の紫外線吸収剤と、を含み、
  110℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂組成物。
  ここで、前記ヒドロキシフェニルトリアジン骨格は、トリアジンと、トリアジンに結合した3つのヒドロキシフェニル基とからなる骨格

 

問題になったのは「分子量が700以上の紫外線吸収剤」の数値「700」です。

被告側の紫外線吸収剤の分子量は「699.91848」でした。

「分子量が700の紫外線吸収剤」と「分子量が699.91848の紫外線吸収剤」とは同じようなものと思うのが普通でしょうね。

しかし、その普通と思われるのが違うのが訴訟の面白いところでしょうか。

訴訟は知恵比べですね。その知恵比べで、今回は、特許権者が負けた訳です。

勿論、特許の審査にあっても、出願人・代理人と審査官との間での知恵比べです。

特許権者は、数値「700」は少数第1位の数字を四捨五入した数値と理解されるから、「700」=「699.5以上」であると理解すべきと主張しました。

更に、数値「700」に臨界的意義も無いのだと主張しております。

尤も、そうだとする、何故、「700以上」と限定したのかが理解できません…。しかも、出願時より「分子量が700以上の紫外線吸収剤」と限定しておりましたから…。

特許権者が均等侵害も主張した結果、知財高裁も数値「700」に臨界的意義が無い事を認め、均等の第1要件を充足する旨を判断しました。すなわち、数値「700」は発明の本質的な要件では無い事を認めた訳です。しかしながら、均等の第5要件(意識的除外等の特段の事情)を充足しない、即ち、分子量が700未満のものは権利範囲外である旨を特許権者が言っていた旨の判断を下しました。まあ是は理解できなくもないです。

「699.91848」を四捨五入する場合、通常は最後尾の数字を四捨五入でしょうから、「699.9185」です。

「699.91848」の小数第1位の数字「9」を四捨五入は通常では有り得ませんから、宇高は「699.9185」が「700」に相当と言うのは論理的に無理だったと思います。

特許法の超法規的判断「均等論」は、マキサカルシトール事件において、特許権者に極めて優位な立場を付与致しましたが、数値に関する点だけは従来の判断と同じでした。

数字に臨界的意義は乏しい(効果は漸近的に改善)と思われますから、とは言うものの拒絶理由通知に際しては臨界的意義が有るかのような反論を私達も致します。

私達はクレイムでは発明者が提案の数値よりも幅広く記載しております。その大幅に広目で設定した範囲外のものが出て来た場合、現状では致し方ないようです。

しかし、今回の知財高裁の判断で、数値限定発明でも均等の第1~第4要件をクリアできているので、第5要件もクリアできそうです。

本件は最高裁に上告していないようですが、特許権者が上告して争えば高裁の判決を引っ繰り返せたと宇高は考えてます。

 

 

 

 

 

見出し

雪の那須岳を歩きました。登山口に在る山の神様の鳥居が頭を残して雪に埋まっておりました。アイゼンを履いての登山で凍った個所でも安全に登れました。頂上から下る途中の昼頃より雪が降り始めましたが、登山中は風も雨もなく快晴で絶好の日よりでした。
下山後には温泉に浸かり満足な一日でした。

今回は知財高裁まで出訴して認められた特許第6754969号発明「ホストクラブ来店勧誘方法」に関してです。

 

本件特許発明の経緯は下記の通りです。
  出願日           2017年4月13日
  出願番号          特願2017-79818
  出願審査請求日       2017年8月2日
  早期審査に関する事情説明書 2017年8月3日
  拒絶理由通知        2017年9月5日
  意見書・補正書提出     2017年10月9日
  拒絶査定          2017年12月12日
  拒絶査定不服の審判     2018年3月12日
  審判番号          不服2018-3578
  補正書提出         2018年3月12日
  補正書提出         2018年5月11日
  審決(本件審判請求は成り立たない。) 2019年4月23日
  知財高裁での審決取消訴訟  令和元年(行ケ)第10072号
                令和2年3月17日判決言渡で勝訴
  審決(特許査定)      2020年7月7日


経緯を参照しますと、気合が入っていた事が判ります。

知財高裁まで出訴してますから、費用が掛かった事も読み取れます。

特許権者は本件特許をどのように有効活用しようとしたとお考えなさるでしょうか。

宇高は本件特許権による独占排他権の行使は余り考えていないように思います。

皆様も特許活用法を振り返ってみるのも宜しいかと思います。
有効活用法を御連絡頂きました皆様には、後日、ご報告したいと宇高は考えております。
宜しくお願い申し上げます。

本件特許発明
【請求項1】
  ホストクラブへの来店を勧誘させる方法であって、
  潜在顧客に対してホストクラブ来店勧誘キットを提供するステップを含んでおり、
  ホストクラブ来店勧誘キットは、スマートフォンを装着することにより仮想現実動画ファイルを再生して仮想現実動画を視聴し得る紙製の仮想現実ゴーグルと、ホストクラブ仮想体験サービス提供サーバーへのアクセス情報を表示したアクセス情報表示部とを備えており、
  ホストクラブ仮想体験サービス提供サーバーにはホストクラブ仮想体験サービス提供プログラムが実装されており、ホストクラブ仮想体験サービス提供サーバーの記憶部にはホストクラブを仮想体験させるホストクラブ仮想現実動画ファイルが記憶されており、
  ホストクラブ仮想体験サービス提供プログラムは、ホストクラブ仮想現実動画ファイルをスマートフォンに送って視聴させるプログラムであり、
  前記アクセス情報は、スマートフォンからの操作によりホストクラブ仮想体験サービス提供プログラムを実行可能にする情報であり、
  前記ホストクラブ仮想体験サービス提供サーバーの記憶部には、潜在顧客の心理状態に応じて選択され潜在顧客の心理状態に応じて異なるメンタルケアを行う複数の異なるホストクラブ仮想現実動画ファイルが記憶されており、
  前記ホストクラブ仮想体験サービス提供サーバーは、異なる心理状態の表記が各々されているとともに潜在顧客の心理状態に応じて選択される複数のコマンドボタンが設けれられた一つのウェブページを提供するものであり、各コマンドボタンは各ホストクラブ仮想現実動画ファイルに対応しており、選択されたコマンドボタンに対応するホストクラブ仮想現実動画ファイルをメンタルケアとしてスマートフォンに送って再生させることを特徴とするホストクラブ来店勧誘方法。

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商標「2ちゃんねる」訴訟

 東京地裁の判決と知財高裁の判決とは、証拠資料を同じくするも、結果は真逆です。

 訴訟では、原告と被告との間での戦いですが、ターゲットは裁判官です。

 裁判官をより納得させる論理を構築した者が勝訴です。

 

 上記商標の商標権者である原告が、被告が電子掲示板に「2ちゃんねる」「2ch.net」の表示をする事は上記各商標権を侵害すると主張して、商標法第36条第1項又は不正競争防止法第3条第1項に基づき、被告標章の使用の差止め、及び商標権侵害につき民法709条,不正競争行為につき不正競争防止法第4条に基づき損害賠償1億7500万円及び平成29年1月19日から被告標章の使用を中止するまで月額500万円の割合による金員の支払を求めた事案です。

 

 一審・東京地裁の判決が

「1 本件訴えのうち,令和元年11月2日以降に生ずべき損害賠償金の支払を求める部分に係る訴えを却下する。

 2 被告は,その運営する掲示板に,別紙被告標章目録記載の各標章を使用してはならない。

 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。」

であったのに対して、

 二審・知財高裁の判決は

「1 控訴人の本件控訴に基づき、原判決主文3項を次のとおり変更する。

  (1) 被控訴人は、控訴人に対し、2億1700万円を支払え。

  (2) 控訴人の損害賠償請求のうち令和元年11月1日までに生ずべき損害賠償金の支払を求める部分のその余の請求及び「2ch.net」のドメイン名の使用の差止めを求める控訴人の請求をいずれも棄却する。

 2 被控訴人の附帯控訴に基づき、原判決主文2項を取り消し、同項に係る控訴人の請求を棄却する。」

でした。

 

 

平成29年(ワ)第3428号 商標権侵害差止等請求事件

 【東京地方裁判所民事第46部における判決】

    主 文

1 本件訴えのうち,令和元年11月2日以降に生ずべき損害賠償金の支払を求める部分に係る訴えを却下する。

2 被告は,その運営する掲示板に,別紙被告標章目録記載の各標章を使用してはならない。

3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

 

(2) 争点1-2(被告は被告標章について先使用権を有するか)について

  (被告の主張)

  被告は,平成16年から平成29年9月30日まで,継続して本件電子掲示板を管理・運営し,不正競争の目的によることなく,原告による原告商標の出願日以前から被告標章を使用していた。

 また,本件電子掲示板の事業において,被告標章は,原告商標の出願以前から需要者の間に広く認識されており,周知であった。

 したがって,被告には,被告標章1及び2につき先使用権が認められる。

  (原告の主張)

 平成11年以降平成26年2月19日まで,本件電子掲示板を運営していたのは原告である。上記期間,原告は,被告に対し,本件電子掲示板のサーバのID・パスワードの管理と本件ドメイン名の管理を委託していたにすぎない。本件電子掲示板を平成16年から運営している旨の被告の主張は,本件電子掲示板の運営主体という極めて基本的事項について主張が変遷しており,信用できない。

 また,原告商標1及び2の出願当時において,被告標章1及び2が被告の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていなかったことは明らかである。

 さらに,被告は,平成26年2月19日に原告が本件電子掲示板のサーバにアクセスできないようにして本件電子掲示板を乗っ取ったのであるから,「不正競争の目的」(商標法32条1項前段)が認められる。

 したがって,被告には,被告標章1及び2につき先使用権は認められない。

 

第3 当裁判所の判断

 ……

 争点1-2(被告は被告標章について先使用権を有するか)について

 被告は,原告商標の出願日の前から,被告標章を使用して本件電子掲示板を管理・運営していたとし,被告標章につき先使用権を有する旨主張する。

 前提事実2⑷及び前記2のとおり,原告商標1及び2の指定役務と本件電子掲示板の役務は同一であり,被告標章は原告商標と,それぞれ同一又は類似する。

 前記認定事実によれば,本件電子掲示板は,①平成11年に開設され,平成12年に西鉄バスジャック事件の犯人とされる少年が同掲示板に犯行予告を書き込むなどの出来事もあって社会的に注目を集めるようになり,平成14年頃には利用者が急激に増加し(前記2⑵ア,ウ,エ),②平成16年及び平成17年には本件電子掲示板に掲載された投稿をほぼそのまま出版した「電車男」が話題となり,インターネットに係る複数の賞を受賞し,これがネットニュースで報道され(前記2⑵カ),③平成18年頃には,本件電子掲示板の名称である「2ちゃんねる」という言葉がマスコミにおいて頻繁に登場したり,本件電子掲示板内において使用される用語が一般の雑誌においても使われたり,電子掲示板を利用しない一般人の間でも本件電子掲示板が話題に上ったりするようになった(前記2⑵キ)。

 これらによれば,本件電子掲示板のトップページ等に表示されていた被告標章1及び2は,遅くとも,平成18年には,本件電子掲示板に係る役務を表示するものとして,全国の需要者の間に広く認識されるに至ったと認めることができる。そして,平成25年3月当時,本件電子掲示板の月間の閲覧数が29億にのぼるとして「日本語圏最大級のネットコミュニティ」などと宣伝されていたことに照らせば(前記2⑵ス),原告商標が出願された日においても,上記周知性が維持,継続していたものと認められる。

 ……

 以上によれば,被告は,被告標章につき先使用権を有すると認められ,平成26年2月19日から,被告が継続して本件電子掲示板を運営していた平成29年9月30日までの期間については(前記前提事実⑸),被告による被告標章の使用は,同先使用権に基づくものとして原告商を侵害しない。

 また,前記2⑵ツによれば,本件電子掲示板は,平成29年10月1日から平成30年4月までの間に Loki 社が運営するようになり,名称は「5ちゃんねる」と,ドメイン名は「https://5ch.net」と変更され,トップページ等における被告標章の表示も削除されたことが認められる。そうすると,平成29年10月1日以降,被告が本件電子掲示板を運営し,被告標章の使用を継続していた期間については,その使用は先使用権に基づくものとして原告商標を侵害しないといえ,Loki 社が運営を開始して以降は,被告が被告標章を本件電子掲示板のトップページ等に表示して使用した事実は認められない。

 したがって,原告の商標権に基づく損害賠償請求には理由がない。なお,

原告商標1及び2に基づく差止めの必要性については,後記6のとおりであ

る。

……

8 結論

 よって,本件訴えのうち令和元年11月2日以降に生ずべき損害賠償金の支払を求める部分に係る訴えは不適法であるから却下し,商標権に基づく被告標章の差止請求には理由があるからこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,仮執行宣言は相当でないのでこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。

 

 

令和2年(ネ)第10009号、同年(ネ)第10037号 商標権侵害差止等請求控訴事件、同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第3428号)

 【知的財産高等裁判所第2部における判決】

    主 文

1 控訴人の本件控訴に基づき、原判決主文3項を次のとおり変更する。

(1) 被控訴人は、控訴人に対し、2億1700万円を支払え。

(2) 控訴人の損害賠償請求のうち令和元年11月1日までに生ずべき損害賠償金の支払を求める部分のその余の請求及び「2ch.net」のドメイン名の使用の差止めを求める控訴人の請求をいずれも棄却する。

2 被控訴人の附帯控訴に基づき、原判決主文2項を取り消し、同項に係る控訴人の請求を棄却する。

3 訴訟費用(控訴費用、附帯控訴費用を含む。)は、第1、2審を通じてこれを10分し、その6を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。

 

第3 当裁判所の判断

 当裁判所は、控訴人の本件訴えのうち当審の口頭弁論終結の日の翌日である令和4年11月29日以降に生ずべき損害賠償金の支払を求める部分は不適法であるが、その余の本件損害賠償請求の一部については理由があり、また、控訴人の被告標章差止請求及び本件ドメイン差止請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、前記第2の4の当審における当事者の補充主張に対する判断を含め、次のとおりである。

 ……平成18年5月12日発行の「2ちゃんねる公式ガイド2006」にも控訴人が本件電子掲示板の生みの親であることなどが記載されていたこと(同(2)カ、キ)のほか、その後も控訴人が平成18年当時本件電子掲示板の管理人であったことに沿う事実が認められること(同(2)ク~シ・セ・ト)を考慮すると、前記(1)で原判決の第3の4(3)を訂正の上で引用して認定したように「2ちゃんねる」の標章及び「2ch.net」の標章が周知性を獲得したというべき平成18年の時点において、その役務の提供の主体は、控訴人であったというべきである。

 イ() 他方で、本件全証拠をもってしても、平成18年の時点及びそれ以降平成26年3月27日(原告商標2の出願日)までのいずれかの時点において、「2ちゃんねる」の標章及び「2ch.net」の標章が、NTテクノロジー社又は被控訴人の業務に係る役務を表示するものとなったとみるべき事情は認められない。

 () この点、NTテクノロジー社については、本件電子掲示板のサーバを提供したこと(前記2(2)())や、PINKちゃんねるを開設し、2ちゃんねるビューアの販売及び運営を行うようになったこと(同(2)ウ)、平成14年頃以降、本件電子掲示板の広告料の売上げからの送金を受けていたほか、2ちゃんねるビューア「●」の売上げを取得していたこと(同(2)ウ・エ)、本件ドメイン名について平成17年5月10日時点でAが運営面に関する連絡先として登録されたりNTテクノロジー社が登録サービス提供者として登録されたりしていたこと(同(3)イ~カ)が認められる。

 しかし、サーバの提供者が直ちに当該サーバを用いた事業の運営者となるものではないことは明らかである。……

(3) まとめ

 以上によると、その余の点について判断するまでもなく、被控訴人が被告標章について先使用権を有するものとは認められない。

……

第4 結論

 以上によると、控訴人の本件訴えのうち当審の口頭弁論終結日の翌日である令和4年11月29日以降に生ずべき損害賠償金の支払を求める部分に係る訴えは不適法であるから却下すべきであり、その余の本件損害賠償請求につき、2億1700万円の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却すべきであり、また、控訴人の被告標章差止請求及び本件ドメイン差止請求には理由がないから棄却すべきところ、これと異なり、控訴人の被告標章差止請求を認容し、本件ドメイン差止請求を棄却し、控訴人の本件訴えのうち令和元年11月2日以降に生ずべき損害賠償金の支払を求める部分に係る訴えを却下し、その余の本件損害賠償請求を棄却した原判決は一部失当であって、控訴人の控訴は一部理由があり、被控訴人の附帯控訴は理由があることから、控訴人の控訴に基づき、原判決主文3項を上記のとおり変更し(なお、原判決主文1項については、被控訴人がその変更を求めていない本件において原判決を控訴人の不利益に変更することは許されないことから、原判決が令和元年11月2日から令和4年11月28日までに生ずべき損害賠償金の支払を求める部分に係る訴えを却下したところについては変更しない。)、また、被控訴人の附帯控訴に基づき、原判決主文2項を上記のとおり変更することとして、主文のとおり判決する。

 veni-vidi-vici(来た、見た、勝った)】

役に立つ特許は当たり前じゃあないかと謂われる発明】

 下記の事例は斯の程度の発明でも特許出願したフィリップモリス社の知恵の賜物と宇高は考えてます。

 フィリップモリス社が所有する加熱式タバコの特許第6125008号の権利は下記の内容です。

【請求項1】
 
エアロゾル発生装置におけるエアロゾルの発生を制御する方法であって、前記装置は、

  エアロゾル形成体を含むエアロゾル形成基材を加熱するように構成された少なくとも1つの加熱要素を含むヒータと、
 前記加熱要素に電力を供給するための電源と、
を備え、

 前記方法は、
  前記加熱要素に供給される前記電力を、前記装置を動作させた直後の第1段階において前記加熱要素の温度が初期温度から第1の温度に上昇するように電力が前記少なくとも1つの加熱要素に供給され、第2段階において前記加熱要素の温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度に低下するが、前記エアロゾル形成体の揮発温度より低くならないように電力が供給され、第3段階において前記加熱要素の温度が前記第2の温度より高い第3の温度に上昇するように電力が供給されるよう制御するステップを含む、
ことを特徴とする方法。

 要約すると、
  タバコ吸い始め開始時は、加熱温度を急激に高くし、
  タバコが吸えるようになると加熱温度を低くし、
  終わり近くになると加熱温度を再度高くするものです。

 これは当然です。

 早く吸いたいから、加熱温度を高くして揮発成分を速やかに揮発させます。

 吸えるようになると、そのままの高い温度だと、揮発成分が短時間で揮発して無くなってしまうので、長時間に亘って吸う為には、加熱温度を下げる必要が有ります。下げても予熱されているから揮発成分は揮発します。

 吸い終わり近くになると、揮発成分が少なくなっているので、加熱温度を高くして、強制的に全てを揮発させます。

 こうすると、効率よく、かつ、無駄なくタバコが吸えるようになります。

  是は当たり前の技術と言えば当たり前です。

  この程度で特許?と言いたくなるのは当然でしょう。

 ライバル会社は特許無効を請求して争いましたが負けました。

 フィリップモリス社は東京地裁に訴えを提起(令和2年(ワ)第4331号特許権侵害行為差止請求事件および令和2年(ワ)第4332号特許権侵害行為差止請求事件)しました。

 一審で負けた被告は知財高裁に控訴(令和3年(ネ)第10072号特許権侵害行為差止請求控訴事件、令和4年(ネ)第10073号および同年(ネ)第10096号特許権侵害行為差止請求控訴事件)しました。

 最終的に、令和4年5月13日、令和5年3月23日判決言渡で、控訴審でも、フィリップモリス社の勝訴です。

 

 フィリップモリス社のMarlbroMan Always Remember Love Because Of Romance Over)の箱にはモットーveni-vidi-vici(来た、見た、勝った):ポントスに勝利した際に、カエサルがローマ元老院に送った際の報告」が表示されております。今回の事件もモットー通りだったようです。

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