特許庁は知的財産高等裁判所の判決を受けて商品と役務との類否判断を変更するか?
令和6年(行ケ)第10056号 審決取消請求事件
元旦は箱根・金時山を歩き、二日は沼津アルプスを歩き、三日は伊豆大仁・城山~発端丈山を歩き、令和7年の正月・三が日は山登りの健康三昧な毎日でした。金時山からは富士山を望めませんでしたが、沼津アルプスや発端丈山からは見事な富士山を望む事ができました。さすがに日本一の山です。
さて、知的財産高等裁判所第3部は、商品「A」と役務「商品Aの貸与」とが類似する旨の判決を下しました(令和6年(行ケ)第10056号 審決取消請求事件(令和7年12月1日判決言渡))。
この判決を受けて、特許庁は、商品「A」と役務「商品Aの貸与」とは、商品「A」の種類を問わず、全てにおいて、類似と判断するだろうか?
建設機械や複写機などの事務用機器に関しては、商品と役務とは類似として取り扱っていたでしょうが、あらゆる商品について類似とするのかが興味津々です。
宇高個人的には、知的財産高等裁判所の判決には、「でもなあ」と感じております。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性に関する判断の誤り)について
(1) 本件指定役務と引用指定商品の類否について
ア 判断基準
ある商標の指定商品と他の商標の指定役務とが類似のものであるかどうかは、それらの商品及び役務が通常同一営業主により製造、販売又は提供されている等の事情により、それらの商品と役務に同一又は類似の商標を使用する場合には、同一営業主の製造、販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるか否かによって判断するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)第1104号同36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁参照)。
イ 商品の販売と貸与に関する取引の実情
各項末尾に記載した証拠及び弁論の全趣旨によれば、建設機械の販売及び貸与に関する取引の実情として、以下の事実が認められる。
(ア) 住友建機販売株式会社のウェブサイトには、同社が製造した建設機械に関し、「お客様サポート」の見出しの下、「SUPPORT 01」の箇所に、「購入サポート」と「レンタル」の両方の記載があり、「レンタル」の箇所には、「取扱拠点」に関する記載及び「レンタル機器補償制度について」の記載が存在する。また、住友建機販売株式会社の目的には、「建設機械、運搬機械の製造、販売、賃貸ならびにその部品の販売修理」が含まれている。(甲66の1・2、67)
……
ウ 検討
(ア) 上記イに挙げた事実によれば、建設機械について、その製造業者又はその関連会社が、販売とともに貸与(レンタル)も行っているという取引の実情があると認められる……
(ウ) 商標法施行規則6条及び同規則別表によれば、「土木機械器具」が、商標法施行令2条及び同施行令別表による商品及び役務の区分の第7類「加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械」に属する商品とされており、建設機械は第7類に属する商品であると認められる。
引用指定商品「生ゴミ処理機、液体肥料製造装置」も、第7類に属するものであるから、引用指定商品と建設機械は同じ第7類に属する商品である。
(エ) 以上のとおり、引用指定商品と同じ第7類に属する建設機械について、その製造業者又はその関連会社が、販売とともに貸与(レンタル)も行っているという取引の実情がある。これに加え、複写機、プリンター等の出力機器や事務用機器等の商品を取り扱う会社においても、会社の目的に商品の販売と貸与の両方を挙げる会社が複数存在する(甲72~74。なお、被告も、会社の目的に「産業用機械器具の製造、販売及び賃貸」が含まれている[弁論の全趣旨]。)。機械に商標を使用する者がその機械の貸与も行っていることは、通常、特に意外なこととまではいえず、むしろ、予想し得る範疇のことといえる。また、本件指定役務の需要者は生ゴミ処理機を使用する者であり、引用指定商品の需要者も、その多くは、生ゴミ処理機を使用する者であると推認されるから、双方の需要者は多くの部分で共通する。
これらの事情を考慮すれば、本件指定役務と引用指定商品に同一又は類似の商標を使用する場合には、同一営業主の製造、販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるということができる。したがって、本件指定役務と引用指定商品は類似するものと認められる。
⑵ 本件商標と引用商標との比較
本件商標は、「ゴミサー」の文字を標準文字で表してなる商標であり、引用商標も、「ゴミサー」の文字を標準文字で表してなる商標であるから、本件商標と引用商標は同一である。
⑶ 商標法4条1項11号該当性について
上記⑴及び⑵のとおり、本件商標と引用商標は、商標が同一であり、かつ、本件指定役務と引用指定商品が類似しているから、本件商標は、その登録出願の日前の登録出願に係る他人の登録商標である引用商標と同一であって、その商標登録に係る指定商品に類似する役務について使用するものであり、本件商標は商標法4条1項11号に該当する。本件商標は、同法46条1項1号により無効にすべきこととなる。
⑷ 被告の主張に対する判断
被告は、前記第3の1〔被告の主張〕のとおり、建設機械の業界と「生ゴミ処理機」の業界とでは、製品の特性、価格、主要な需要者層等の取引の実情が全く異なり、取引実態の異なる他の業界の事例は、本件指定役務と引用指定商品との類否判断の参考とならないなどと主張する。
しかし、生ゴミ処理機の業界と建設機械の業界の間に相違点があるとしても、建設機械は、引用指定商品と同じ第7類「加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械」に属する商品であることからすれば、建設機械に関する取引の実情を考慮に入れることを不当とすることはできない。
また、生ゴミ処理機の業界において、同一の商標がその商品と貸与の役務に使われても、同一営業主のものと誤認されるおそれがないほどに、製造、販売者と貸与者が明確に区別されて需要者に認識されていることを示すといえる証拠もない。
したがって、被告の上記主張は採用することができず、その他、被告の主張する内容を検討しても、上記⑴ないし⑶の認定及び判断は左右されない。
⑸ 取消事由1に関する結論
以上によれば、本件商標が商標法4条1項11号に該当するとは認められないとの本件審決の判断は誤りであり、取消事由1は理由がある。
2 結論
以上のとおり、取消事由1は理由があり、本件審決にはこれを取り消すべき違法がある。
よって、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求は理由があるからこれを認容することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部