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金鳥(大日本除蟲菊株式会社)は特許第7026270号発明のポイントを正しく理解していた筈なのに、なぜ、敗訴?

その理由1.請求項の文章が長すぎた!⇒散漫になってしまった。

特許訴訟で勝訴の為の明細書を作成する為には

当所がセミナーで教えている特許請求の範囲・特許明細書の書き方を習っていたら、勝訴していたのになあ

 

大日本除蟲菊株式会社(金鳥)が、アース製薬株式会社に対して、特許第7026270号特許権を侵害されたとして訴えた特許権侵害訴訟

 特許第7026270号の特許発明の内容は次の通りでした。

【請求項1】
 害虫防除成分と有機溶剤とを含有するエアゾール原液、及び噴射剤を封入してなる定量噴射バルブが設けられた耐圧容器と、
 前記定量噴射バルブに接続される噴射口が設けられた噴射ボタンと、
を備えた蚊類防除用エアゾールであって、
 前記害虫防除成分は、メトフルトリン及び/又はトランスフルトリンであり、
 前記エアゾール原液は、前記害虫防除成分を14.3重量%以上含有し、
 前記噴射ボタンを1回押下したときの噴射容量が0.1~0.4mLとなり、
 前記噴射距離20cmにおける噴射力が25において0.3~10.0g・fとなるように調整され、
 前記エアゾール原液は、前記噴射口から、少なくとも一部が処理空間内における蚊類が止まる露出部に付着する付着性粒子として噴射され、
 前記エアゾール原液を処理空間に1回噴射した場合、前記害虫防除成分の噴射量が4.5~8畳あたり5.0~30mgに調整される蚊類防除用エアゾール(但し、自動噴霧装置本体に装着されてなる蚊類防除用エアゾールを除く)。 

 東京地裁は「付着性粒子」は、噴射から時間がたっても壁や床に付着した状態を維持し、蚊を駆除できるものを指すと捉えられると指摘し、付着の量などの確認方法の記載が見当たらず、特許の権利が及ぶ範囲が第三者からはっきりしないことから、第7026270号特許発明は「不明確で無効とされるべきだ」との判断を示したとの報道がなされております。 

 本件判決書が未だ公開されていないので詳細な検討は出来ておりませんが、宇高の考えを以下に述べます。

 本件特許発明の明細書には下記の記載が有ります。
【0046】
  [付着性粒子]
 図1(b)に示されるように、エアゾール原液を処理空間に1回噴射すると、付着性粒子X、及び浮遊性粒子Yが形成される。図1(b)において、白丸で示されているものが付着性粒子Xであり、黒丸で示されているものが浮遊性粒子Yである。両者の粒子径は異なっており、付着性粒子Xの方が浮遊性粒子Yより大きな粒子径として形成される。付着性粒子Xの好ましい粒子径は、25、噴射距離15cmにおける体積積算分布での90%粒子径が20~80μである。この範囲であれば、エアゾール原液が処理空間に噴射された際、速やかに処理空間内の露出部に移動し、付着することができる。そのため、露出部に止まっている蚊類を付着性粒子Xの害虫防除成分によってノックダウン又は死滅させることができる。また、処理空間内に侵入し、露出部に止まろうとしている蚊類に対しても害虫防除効果を奏するため、処理空間外へ追い出すことも可能となる。粒子径が20μm未満であると、粒子径が小さすぎるため、露出部まで到達することが困難となり、その結果、露出部に止まっている、あるいは、止まろうとしている蚊類を防除することが困難となる。一方、粒子径が80μmを超えると、粒子径が大きすぎるため、付着性粒子の挙動をコントロールし難くなり、露出部に適切に付着させることが困難となる。付着性粒子Xのより好ましい粒子径は、25℃、噴射距離15cmにおける体積積算分布での90%粒子径25~70μmである。
【0047】
 また、付着性粒子Xの好ましい付着量は、処理空間内の露出部に1m当たり0.01~0.4mgであり、好ましくは、1m当たり0.05~0.2mgである。このような範囲であれば、露出部に止まっている蚊類を効果的にノックダウン又は死滅することができる。付着量が1m当たり0.01mg未満であると、露出部に止まっている蚊類に対し充分な防除効果を奏することができず、蚊類をノックダウン又は死滅させることが困難となる。一方、付着量が1m当たり0.4mgを超えても、害虫防除効果は大きく向上することはなく、また、エアゾール原液の使用量も過大となるため、経済的にも不利である。

  本件特許発明の発明者は、害虫防除成分を、空中に浮遊させるよりも、壁などに付着させた方が効果的である事に気付いて発明がなされた旨が記載されております。
 蚊だって、長時間ブンブン飛び交っていれば疲れるから、羽休みの為に、天井や壁に止まるのは当然ですよね。

 誰しも、判っていたでしょうが、気付いていなかった。
 発明者は発明のポイントに気付いていたのです。
 発明者は知恵ある方ですね。

 それなのに、どうして、上記請求項1の如きの権利にしてしまったのでしょう?

 本件発明は第4世代までの分割出願(特願2023-98264:特許第)が有り、この第4世代の分割出願も特許第7664969号として特許になっております。
 しかし、何れの特許にあっても、分割出願である以上、本件東京地裁の指摘事項は全く解消されず、無意味な特許権になってしまいました。

 宇高が担当していたならば、下記の請求項を作成したでしょう。
【請求項1】
 害虫防除成分と有機溶剤とを含有するエアゾール原液、及び噴射剤を封入してなる定量噴射バルブが設けられた耐圧容器と、前記定量噴射バルブに接続される噴射口が設けられた噴射ボタンとを具備してなり、
 前記害虫防除成分はメトフルトリン及び/又はトランスフルトリンであり、
 前記エアゾール原液は、前記害虫防除成分を14.3重量%以上含有し、
 前記エアゾール原液が前記噴射口から噴射されて前記害虫防除成分が蚊類が止まる露出部(壁および/または天井)に付着してなる
蚊類防除技術。
【請求項2】
 害虫防除成分を(14.3重量%以上?)含有するエアゾール原液が噴射されて前記害虫防除成分が蚊類が止まる露出部(室内の壁および/または天井)に付着してなる
蚊類防除技術。
【請求項3】
 蚊類防除用薬剤成分が室内の壁および/または天井に付着するように蚊類防除用薬剤成分含有組成物が室内で噴霧されて蚊類が防除される技術であって、
 25℃で噴射距離15cmにおける体積積算分布での90%粒子径が20μm以上である(よう調整されてなる?)
蚊類防除技術。
【請求項4】
 蚊類防除用薬剤成分が室内の壁および/または天井に付着するように蚊類防除用薬剤成分含有組成物が室内で噴霧されて蚊類が防除される技術であって、
 蚊類防除用薬剤成分含有組成物(蚊類防除用薬剤成分)の付着量が1m当たり0.01mg以上である
蚊類防除技術。

【請求項n】
 25mの部屋での蚊成虫に対する防除(閉めきった25mの部屋の中央で蚊類防除用エアゾールを1回噴射した直後にアカイエカ雌成虫50匹を放ち、20時間(?)暴露させた後で供試蚊を回収した。時間経過に伴い落下仰転したアカイエカ雌成虫を数え、KT50値を求めた。)がxxxx以下である
請求項1~  の蚊類防除技術。

  もちろん、明細書中には、「粒子径の測定方法」、「蚊類防除用薬剤成分含有組成物(蚊類防除用薬剤成分)の付着量の測定方法」を記載してます。測定方法の違いによって測定値の値が異なるので、測定方法の明記は必須です。それから、請求項に記載の文章が短ければ、誰しも測定方法を記載しておく事に気付きます。宇高の特許明細書の書き方を参考にしてれば、測定方法の記載は当たり前です… 

 残念な事に、本件特許発明のポイントを分散させた(請求項1に記載の文章が長すぎた)為に、即ち、特許発明を的確に記載しなかった為に、害虫防除を効果的に奏させる為の付着量や粒径の測定方法にまで気を向けられなかったようです

 

 

 

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