バッファローハードディスク事件(登録第1409214号意匠権侵害訴訟)
平成30年(ワ)第6029号 令和2年(ネ)第1492号
主 文
1被告は,別紙物件目録記載の製品を製造し,販売し,輸出し,若しくは輸入し,又は販売の申出をしてはならない。
2被告は,別紙物件目録記載の製品を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,3528万1382円及び……支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
登録第1409214号意匠
被告製品
第4 当裁判所(大阪地方裁判所第26民事部)の判断
1 争点1(本件意匠と被告意匠の類否)について
(1) 登録意匠とそれ以外の意匠との類否の判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行う(意匠法24条2項)。この判断に当たっては,両意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様を全体的に観察するとともに,意匠に係る物品の用途や使用態様,公知意匠等を参酌して,需要者の最も注意を惹きやすい部分,すなわち要部を把握し,要部において両意匠の構成態様が共通するか否か,差異がある場合はその程度や需要者にとって美感を異にするものか否かを重視して,両意匠が全体として美感を共通にするか否かによって判断するのが相当である。
(2) 本件意匠の構成態様
……
(ア) プレートについて
本件意匠の構成態様に含まれる「プレート」とは,より具体的かつ詳細には,その表面が別紙「本件意匠の図面」記載の平面図及び正面図において示される面をなすものであり,平面及び正面の表面部分と本体との間に溝部が設けられること(基本的構成態様(B3))によって,平面及び正面の表面部分側に,略全面に渡って一定の厚みで形成された薄い1枚の板状の部分であって,略全面に渡って平坦であるとともに,背面図,左側面図及び右側面図(さらに,本件意匠公報の各参考斜視図)から明らかなとおり,平面から正面へと繫がる角は側面視円弧状に湾曲している(基本的構成態様(C3)の前半部分)。このプレート部分は,上記のような配置及び形状から,本件意匠を視認する者において本体や溝部とは明瞭に区別して把握されるものである。
このことに鑑みると,プレート部分は,独立の構成として特定するのが相当であるとともに,本件意匠の骨格的な形態をなすものとして基本的構成態様に位置付けるべきである。
しかし、宇高は、裁判官が指摘の斯の骨格的な形態には意匠の創作力が無い、即ち、意匠の要部に成り得ないと考えてます…
ところで、両意匠の類否を、特許庁では如何に判断したでしょうか?
意匠専門家による判断は、裁判官とは真逆でした。
すなわち、裁判官は上記両意匠が類似(即ち、被告製品は本件意匠権を侵害)と判断したのに対して、意匠専門家である特許庁・審判官は上記両意匠が非類似(即ち、被告製品は本件意匠権を侵害せず)と判断しました。
特許庁による判定2019-600019
【結論】
イ号意匠の図面及びその説明により示された「データ記憶機」の意匠は,登録第1409214号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
【理由】
……
第4 当審の判断
……
イ 相違点の評価
相違点2は,プレート部の前面部分における相違であり,プレート部の前面を1枚の平滑な面としたものであるか否かは,一見して気が付く相違であるし,開口部や切り欠き部の有無の相違は,操作性に関わる相違との印象をもたらすものであるから,相違点2が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きい。
相違点3は,前方下側の角部を湾曲面としたか否かの相違であるが,底面に回り込む部分の相違であるとしても,前面下端寄りの開口部や切り欠き部の有無の相違と共に目に入ってくる部分の相違であるから,相違点3が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きい。
相違点4は,側面視における溝の相違であるが,パネル状部分と上面,前面及び少し底面に回り込んだ所のプレート部との間に一条の溝を設けた本件登録意匠については,パネル状部分が側面を全体的に覆い,上面及び前面のプレート部が本体から飛び出しているように感じさせ,パネル状部分の四周に一条の溝を設けたイ号意匠については,ごく細い額状の枠体の中に,それより一回り小さなパネルが嵌め込まれているように感じさせ,両意匠は本体の側面視の形態が大きく異なるとの印象をもたらし,イ号意匠の上側の溝に一定間隔で設けた複数の凹部の有無の相違も加わって,相違点4が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きい。
相違点5は,左右両側面のパネル状部分における相違であるが,斜めの凹凸筋を設けたか否かの相違は,パネル状部分の全面に及ぶものであるから,一見して気が付く相違であり,通気口の有無の相違も加わって,相違点5が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きい。
(3)両意匠の類否判断
両意匠について意匠全体として総合的に観察した場合,両意匠は,意匠に係る物品は同一であるが,その形態については,上述の共通点及び相違点の評価に基づけば,共通点1ないし7を備えた形態は,両意匠に一定の共通感をもたらしているとしても,前面を1枚のプレート部としたか否かの相違及び前面における開口部や切り欠き部の有無の相違(相違点2),並びに前方下側の角部を湾曲面としたか否かの相違(相違点3)が相まって,前面の形態について異なる印象をもたらし,側面視の形態についても,溝の相違(相違点4)及びパネル状部分の相違(相違点5)が相まって異なる印象をもたらすものであり,この前面及び側面視の形態の相違が合わさって,需要者に異なる美感を起こさせるものである。
したがって,両意匠は,類似するものではない。
宇高も特許庁・審判官の判断の方が正しいと考えております。
しかし、宇高は、意匠の類否に関する裁判所の判断(要部が似てれば類似の判断)を、今後は、積極的に利用して行くべきと考えております。
意匠権も馬鹿には出来ないですね!